不妊治療コラム

COLUMN

2023年の治療成績 

高度生殖医療について

採卵周期563周期平均年齢 36.4歳
胚移植周期638周期平均年齢 36.1歳

2020年10月に開院して3年目となり、採卵周期は563周期、胚移植周期数は638周期まで増加しました。2022年4月から生殖補助医療が保険適応となったことも大きく影響しています。保険適応となり、ART開始年齢も以前より低下しています。

福岡市ではプレコンセプションケア推進事業の一環として30歳になる女性を対象に、卵巣予備能の指標となるAMH(抗ミュラー管ホルモン)検査費用の一部を助成する制度があります。

当院でこの検査を受けられた方の数が福岡市内のクリニックの中では最も多かったとのことです。

検査を受けられた方の中には、AMH値が1.0ng/mlを下回っている方もいらっしゃいました。そのような方を速やかに治療へご案内できるようになったのは、不妊治療が保険適応化された恩恵の一つといえます。

妊娠成績

凍結胚移植638周期平均年齢 36.1歳妊娠率 44.2%(282名)

当院での体外受精における妊娠率は平均44.2%と全国平均36.9%(2021年日産婦)に比較して高い妊娠率となっています。上記の凍結胚移植には初期胚移植も含まれておりますが、生殖補助医療が保険適応化され移植回数に制限のある制度の中では、なるべく胚盤胞移植を目指したいと当院では考えています。胚盤胞での凍結胚移植の妊娠率は45.3%でした。これまでの治療経過で胚盤胞へ到達できない方や、卵巣予備能の低下のため採取可能な卵子が極端に少ない方は、初期胚移植を選択する場合もあります。

年齢別妊娠率

29歳以下68.5%
30歳から34歳57.2%
35歳から39歳43.5%
40歳以上22.8%

全胚移植周期を対象とした年齢別妊娠率です。

日本産科婦人科学会より2021年ARTデータブックとして2021年に日本で行われた体外受精に関するデータが報告されています。妊娠、出産までを追跡しているため最新データは2021年に行われたデータとなります。

出生数についてです。

FET:凍結融解胚移植、ICSI:顕微授精、IVF:体外受精(媒精)

ICSI周期とIVF周期は新鮮胚移植を施行した治療周期

ARTで出生した赤ちゃんは毎年増加していて、2021年は過去最多の69797人でした。

このグラフは、各年齢でどれくらいの人が治療を行い、妊娠、出産したかを示しています。治療周期は39~42歳あたりが最多ですが、妊娠・生産周期は35~36歳あたりを境に減少しています。これは、どうしても年齢が上がるにつれ妊娠しにくく、また流産しやすくなっていることを示しています。

年齢が上がるにつれ妊娠率の低下と流産率の上昇が起こっています。これは2021年に限らず同じ傾向です。

高齢症例での流産率を低下させる方法として、着床前診断であるPGT-Aが1つの選択肢として検討されます。

当院はPGT-A・SRの承認実施施設となっており実施は可能です。

治療が全て自費診療で行われることや、年齢が上がると移植可能な正倍数胚が得られる可能性が低いことなど問題点もあり、当院では保険診療、先進医療と、自費診療について患者様とご相談しながら治療を進めて参ります。