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5 不育症

妊娠はするけれど流産・死産を繰り返して結果的に赤ちゃんを得られない状態を不育症といいます。これまでの妊娠で2回以上連続した流産、妊娠10週以降の原因不明の流産・死産をご経験されたご夫婦が対象です。
流産は妊娠の約15%に起きます。2回連続して流産が起こる確率は4.2%、3回連続して流産が起こる確率は0.9%です。
不育症の原因には、子宮形態異常、染色体異常、血栓素因、内分泌異常、感染症、免疫学的異常等があげられます。これら全てについて原因を検査し、適正な治療を行います。
妊娠しても、流産・死産を繰り返してしまう不育症は、精神的に非常に辛い状態です。そのストレスは計り知れません。たとえ妊娠しても喜びよりも不安の方がはるかに大きなものとなってしまいます。その不安を少しでも取り除けるよう私たちが力になります。
不育症のリスク因子と検査について
子宮形態異常
中隔子宮や重複子宮などの先天的な形態異常と、子宮粘膜下筋腫等の後天的な異常があります。
超音波検査や、子宮鏡検査、骨盤MRI検査等を組み合わせて診断します。
正常子宮の断面, 弓状子宮の断面, 中隔子宮の断面, 双角子宮の断面
抗リン脂質抗体・血栓素因
抗リン脂質抗体とは、細胞表面のリン脂質に対する自己抗体の一つです。自己抗体は、自分自身の細胞や組織に対して作られる抗体です。抗リン脂質抗体にはループス アンチコアグラント、抗カルジオリピン(CL)IgG抗体、抗カルジオリピン(CL)IgM抗体、抗カルジオリピンβ2グリコプロテインⅠ(CLβ2GPⅠ)複合体抗体があります。
その他の抗リン脂質抗体では抗PE IgG、抗PE IgMを測定します。
血液中の凝固因子という血液を固めて止血をする働きをする因子に異常があると、血の塊である血栓がつくられやすくなります。赤ちゃんを育てるために必要な血管内に血栓が形成されると、必要な養分を赤ちゃんへ届けることができなくなることがあります。不育症に関係する凝固異常ではAPTT、プロテインCおよびS活性、第Ⅻ因子を検査します。
内分泌異常
糖尿病や、甲状腺の機能異常があると流産しやすくなります。血液検査でこれらの機能異常がないかを検査します。
また、黄体機能不全の有無についても排卵から1週間後に血液検査でプロゲステロンを検査します。
免疫機能異常
受精卵が着床する子宮側の免疫機能のバランスに問題があると、受精卵の着床後に拒絶反応が強く妊娠を維持できないことがあります。
免疫細胞のTh1細胞とTh2細胞のバランスを検査します。
拒絶反応が疑われる場合には、拒絶反応を抑えるためタクロリムスという免疫抑制剤を使用します。