不妊治療コラム

COLUMN

胚培養について ART05

胚培養とは、体外受精や顕微授精で受精した卵子(受精卵)を、体外で育てる過程のことをいいます。受精卵を子宮に戻す(胚移植する)ことができる状態まで安全に、安定した環境で発育をサポートする非常に重要な工程です。

胚培養の目的は、受精卵が正常に分割・成長しているかを確認し、妊娠につながる質の良い胚を選ぶことです。
この過程で、受精卵の発育を観察し、発育の途中で分割が止まる胚や異常な形態を示す胚を見分けます。

当院では、経験豊富な胚培養士チームが連携し、医師とともに最も妊娠につながる胚を見極め、確実に次のステップへとつなげています。

■ 胚の発育の段階

受精後、胚は以下のように成長していきます。

日数(受精からの経過)発育段階特徴
1日目受精卵(2PN期)受精が確認された段階。正常受精では2つの前核(PN)が見える。
2~3日目分割期胚2細胞 → 4細胞 → 8細胞へと分裂。細胞分裂のスピードや形の整い具合を観察。
5~6日目胚盤胞(blastocyst)胚が中空の構造を形成。着床可能な段階となる。

多くの場合、胚盤胞(受精後5~6日目)まで培養したうえで凍結保存し、後日、子宮内膜の状態を整えてから移植します。

■ 胚培養の環境

胚は非常にデリケートで、温度・湿度・pH(酸性度)など、
ほんのわずかな環境変化でも発育に影響を受けます。

当院では、以下のような最先端の培養環境を整えています。

  • タイムラプス培養器(EmbryoScope)
     胚を外に出さずに、発育の様子を24時間連続で撮影・観察できます。
     → 胚へのストレスを最小限にしながら、分割のリズムや異常の有無を詳細に評価します。
  • AI胚評価(iDAScoreなど)
     培養中のタイムラプス画像をAIが解析し、着床率の高い胚を客観的にスコア化します。
  • 清浄度管理された培養室環境
     温度・二酸化炭素濃度・揮発性物質などを厳密に管理し、
     自然の体内環境に近い状態で胚を育てます。