不妊治療コラム
COLUMN
人工授精(AIH)について
今回は、私たち培養士目線から「人工授精(AIH)」についてお話しします。
人工授精とは、排卵のタイミングに合わせて医師が直接精子を子宮内に注入する不妊治療です。受精の場である卵管まで、精子ができるだけスムーズにたどり着けるようにサポートするのがこの治療の目的です。卵子と精子が卵管の中で出会い、自然な形で受精・着床を目指す、人工授精はそんな自然妊娠に近いスタイルの治療方法になります。
精液調整
人工授精では、射出精液をそのまま子宮内に注入するのではなく、「良質で元気な精子」を選び出す処理(精液調整)を事前に行います。精液中には、運動性の低い精子や、死滅精子、白血球などの精子以外の細胞、前立腺由来の成分(精漿)などが含まれています。これらを遠心、洗浄処理などでなるべく取り除き、より良質で運動性の高い精子を抽出して調整し子宮内に注入します。
密度勾配遠心法(パーコール法)
当院では「密度勾配遠心法(パーコール法)」という調整方法を採用しています。この方法は精漿の除去、良好精子選別、精子濃縮の目的で使用され、多くのクリニックで採用されています。精液を培養液(パーコール)の上にのせて遠心をかけ、精子の密度の違いを利用して良好精子を選別します。遠心後に沈む質の良い精子を回収する方法で、特に精液検査で運動率や精子濃度が低めだった方に有効的です。

人工授精はどんな人に向いているの?
- 精子の数が少ない、運動率が低い(軽度の男性因子)
- 様々な理由でタイミングがとれない
- タイミングやシリンジ法を繰り返しているが妊娠に至っていない
- なるべく自然に近い形で妊娠がしたい方 など